坂木司『青空の卵』『仔羊の巣』
2006/07/15 (土) カテゴリー/小説(一般書)
主人公は坂木司。20代後半で外資系の保険会社に勤めている彼には、コンピュータプログラマーの鳥井真一というひきこもりの友人がいる。坂木以外との人間とのコミュニケーションを極端に嫌う鳥井を外に連れ出すため、買い物やら何やらと理由をつけて彼を外に連れ出す(最初は半径500m)。ところが近所で起きた事件をきっかけに、警察官になった同級生・滝川、その後輩・小宮を始め、事件で知り合った人間たちと繋がりが出来はじめ、坂木と鳥井の関係に変化が現れる。
シリーズ第1巻が『青空の卵』。「夏の終わりの三重奏」を始め5つの短編を収録。出かけたスーパーで出くわした美女・巣田香織。ちょうどその頃近所で男性を狙った無差別ストーカー事件が発生。事件に巻き込まれそうな坂木のために、鳥井が一肌脱いでくれる。ここから鳥井の名探偵生活がスタートします。『仔羊の巣』は「野生のチェシャ・キャット」はじめ3編の短編。シリーズの最終巻だけ長編のようです(未読。創元クライム・クラブ『動物園の鳥』)。
幼い頃母親に捨てられ、父も家に戻らず祖母に育てられ、その複雑な生い立ちと中学校のひどいいじめが原因で、対人恐怖症になってしまった鳥井。そこに以前から鳥井に憧れを抱いていた凡人(自称)・坂木が手を差し伸べたことで、鳥井の坂木依存症が始まった…と。これは………読者を選びます。鳥井は坂木以外の人には失礼を通り越してほとんど無礼な口のきき方をするのに対し、坂木に対して弱気のスイッチが入ると小学生並みの口調に変わる。坂木の感情にすごく引きずられて、坂木が泣くと(これまた感受性が強くて、よく泣く)これに引きずられて鳥井が取り乱す。それを見て坂木が鳥井を慰める…というパターンはちょっと受け入れがたい人もいるのではないでしょうか。
それでもこの話はこのような関係を終わらせるための物語なのだと思って読んでいた私はさほど不快でもありませんでした。話のあちこちで坂木が「いつかはこの関係を変えないと…」と繰り返しているように、鳥井がいつまでも自分一人をあがめているわけにはいかないという思いが坂木にはある。それは鳥井がいじめられていたときに最後に手を差し伸べたのは「今なら自分と友達になってくれるかも」というエゴがあったと思っている坂木の負い目でもあるわけで。つまり坂木は「そんなふうに思わなくても」と云いたくなるくらいのお人好し。この人の良さが、一人称であることを手伝って、話をまったり〜まったり〜と進めてくれます。確実に坂木の人の良さが鳥井の人間関係を幅広くしていっているのだから、この2人の依存関係が終わるのも目に見えているわけで。一方他の登場人物たちも、過去の事件に囚われたりしていて、どこか人間不信(警官の滝川・小宮と栄三郎は別)な面があり、この2人のある意味異常なくらいの依存関係を見て、人間関係を再び築こうとしていく様子はまさに人間ドラマ。そして登場人物たちが途切れることなく、次の話に登場するので、2人を中心に人間関係が広がっていく様子が微笑ましくもある(坂木にとっていいことかどうかはまた別だけど)。なのでミステリーというにはちょっと物足りない印象もあります。「心あたたまる話が読みたいわ」という方は、ちょいとお手にとってみてくださいませ。
シリーズ第1巻が『青空の卵』。「夏の終わりの三重奏」を始め5つの短編を収録。出かけたスーパーで出くわした美女・巣田香織。ちょうどその頃近所で男性を狙った無差別ストーカー事件が発生。事件に巻き込まれそうな坂木のために、鳥井が一肌脱いでくれる。ここから鳥井の名探偵生活がスタートします。『仔羊の巣』は「野生のチェシャ・キャット」はじめ3編の短編。シリーズの最終巻だけ長編のようです(未読。創元クライム・クラブ『動物園の鳥』)。
幼い頃母親に捨てられ、父も家に戻らず祖母に育てられ、その複雑な生い立ちと中学校のひどいいじめが原因で、対人恐怖症になってしまった鳥井。そこに以前から鳥井に憧れを抱いていた凡人(自称)・坂木が手を差し伸べたことで、鳥井の坂木依存症が始まった…と。これは………読者を選びます。鳥井は坂木以外の人には失礼を通り越してほとんど無礼な口のきき方をするのに対し、坂木に対して弱気のスイッチが入ると小学生並みの口調に変わる。坂木の感情にすごく引きずられて、坂木が泣くと(これまた感受性が強くて、よく泣く)これに引きずられて鳥井が取り乱す。それを見て坂木が鳥井を慰める…というパターンはちょっと受け入れがたい人もいるのではないでしょうか。
それでもこの話はこのような関係を終わらせるための物語なのだと思って読んでいた私はさほど不快でもありませんでした。話のあちこちで坂木が「いつかはこの関係を変えないと…」と繰り返しているように、鳥井がいつまでも自分一人をあがめているわけにはいかないという思いが坂木にはある。それは鳥井がいじめられていたときに最後に手を差し伸べたのは「今なら自分と友達になってくれるかも」というエゴがあったと思っている坂木の負い目でもあるわけで。つまり坂木は「そんなふうに思わなくても」と云いたくなるくらいのお人好し。この人の良さが、一人称であることを手伝って、話をまったり〜まったり〜と進めてくれます。確実に坂木の人の良さが鳥井の人間関係を幅広くしていっているのだから、この2人の依存関係が終わるのも目に見えているわけで。一方他の登場人物たちも、過去の事件に囚われたりしていて、どこか人間不信(警官の滝川・小宮と栄三郎は別)な面があり、この2人のある意味異常なくらいの依存関係を見て、人間関係を再び築こうとしていく様子はまさに人間ドラマ。そして登場人物たちが途切れることなく、次の話に登場するので、2人を中心に人間関係が広がっていく様子が微笑ましくもある(坂木にとっていいことかどうかはまた別だけど)。なのでミステリーというにはちょっと物足りない印象もあります。「心あたたまる話が読みたいわ」という方は、ちょいとお手にとってみてくださいませ。
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