『楽園』上下 宮部みゆき

2008/01/03 (木)  カテゴリー/小説(一般書)

 『模倣犯』の事件から9年、あの事件を暴いたルポライターの前畑滋子はあのときの傷が癒えないまま、小さな仕事を引き受けていた。その滋子のものとに事故で死亡した息子が超能力を持っていたのではないか、と敏子という女性がやってきた。小学生だった等は亡くなる直前に描いた絵の通りに埋められた死体が見つかったのだという。その等が夢を見て描いたスケッチブックの中に「模倣犯事件」を描いたと思われる絵が見つかった。その絵に取り憑かれたように調べ始める滋子だったが、遺棄事件の当事者に接触を図ろうとしたところから新たな依頼を受ける。その少女はなぜ殺され埋められたのか…2つの事件を結びつけるものは一体何か。そして等が見たものは。

 確かに続編ではありますが、別の話とも受け取れます。
 『模倣犯』事件の衝撃も薄れ、そしてそれを読んだ私たちのなかで『模倣犯』のインパクトが薄れて来た頃にこの小説が書かれたということが全てかも。あの事件で普通の人間のなかにある「殺人の快楽」を描いたあと、著者はごく日常にある「殺意」というものに目を向けているのかなと思っていました。それは『名もなき毒』で強く感じたことなのですが、今回も同じ流れのように思います。だから『模倣犯』の続編と言い切らなくてもいいのかな、と思います。
 最初は等という少年の超能力について調査するところから始まるのですが、その「超能力」を調べるきっかけとなった事件こそがメインです。15歳の少女が行方不明になっていた家が火事になり、その家の夫婦が娘を殺し床下に埋めたことを告白する…というものですが、この事件自体はある意味ありふれたものかと。でもこの家族の心情に迫る部分が本当にリアルなのです。子どもが手の付けられない存在になったとき、家族はどうすればいいのか。犯罪を起こした家族を突き放すのか、更生にかけるのか。犯罪者の家族となってしまったら、どうなってしまうのか。リアルさの薄い「超能力」というテーマがいつの間にか今の社会状況を映し出していく…怖いけれど本当に現実を切り取っているリアルさがありました。,,
 けれど『模倣犯』とは違い、この本には救いがあります。出来過ぎのようにも思いますが、泣けてしまいました。多分この救いの部分こそが希望でもあるのだろうけど。
 やっぱりこの宮部みゆきという人はすごいなあ…と思いました。ミステリとしても見事に完成していました。

 2008年1冊目はこちらでした。

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(2007/08)
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