「瞳」

2008/03/31 (月)  カテゴリー/CUE

 「瞳」初日です。
 初…初日から出てるじゃない、ヤスケン!!すごいよ〜〜〜o(> <)o
 髪型は会報などで見ていましたが、6年くらい前?鴨やってたころを彷彿とさせますね。なんかあの演技も鴨みたいと思いました。 
物語はまあ、置いといて今後も出るのだな…と思うだけでうれしい。こういうとき自分は安田国民だと実感します。
 CDJには行けなさそうなので、せめて連ドラで潤いを取り戻したいところ…もうすぐ「アフタースクール」も来るし、楽しみは続くのだ!!

『墓標なき墓場』高城高

2008/03/31 (月)  カテゴリー/小説(一般書)

 昭和33年の夏の未明、殿村水産に所属する天陵丸が沈没した。乗組員は不明、そしてその日花咲港に入港したサンマ漁船・住吉丸が岸壁に衝突するという事故が起きる。住吉丸が天陵丸に衝突し、それを隠すためにわざと岸壁に衝突したという噂を聞いた不二新報釧路支局長の江上は、その現地取材に入る。特ダネを手にしたものの、警察に事情を聞かれた江上は網走に転勤させられ、3年の月日がたった。
 その事件の関係者が相次いで死亡したことを知った江上は再び釧路に降り立ち、事件の背後を探り出す。沈没事故の背景に一体何が起きたのか。
 
 ハードボイルドなんですね。え〜とハードボイルドの分類ってどんなんでしょ(←図書館員失格)。著者は和産ハードボイルドの草分けだそうですが、あまりハードボイルドって思わなかった…ミステリとハードボイルドの違いは暴力の有無かと思っていたので…(汗)。
 発表されたのは1962年!舞台は昭和30年。確かに携帯はないわ、移動手段は公共交通機関だわと時代は感じますが、余計な装飾が一切ない文章が、それを感じさせません。ず〜んと低音が響いているような、あるいは寒い時期に建物の中で外で風が吹いているのを感じ続けているような、そんな印象。
 江上が再び調査を開始し、いきなり3年前の事件を振り返りそれだけで半分以上が費やされます。そのときに蒔かれた種が第2部の3年後に繋がっていくのですが、江上は派手に動く訳ではないので、気がついたら一本の糸になってしまっているという感じ。で、文章もすごく抑制されているし。それに舞台が網走・釧路というだけで荒涼感が増しています。江上だって地味、お酒は好きだけれど喧嘩もそこそこながら仕事を熱心にこなす新聞記者。その新聞記者と警察の関係は今の横山秀夫に通ずるものがあります。これが40年前の作品というのだから、スゴイ。それにタイトルが秀逸です。読んでタイトル見て「おお〜」と思えたタイトルは久しぶり。それに事件のきっかけになった女性は物語の中で一言も発せず消えてしまいました(手紙はあるのだけど)。「あいつはこう云った」というのもなく、姿が消えてしまうというのが印象的だなあ。
 これだけの小説を書いていたのに作家でなく新聞記者の道を選んだそうですが(北海道新聞社に勤め、実際支局長のポストにもついたらしい)、今後わずかな期間に発表された作品が収録されていくそうなので、乞うご期待。

墓標なき墓場 (創元推理文庫 M こ 3-1 高城高全集 1)墓標なき墓場 (創元推理文庫 M こ 3-1 高城高全集 1)
(2008/02)
高城 高

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『ジーン・ワルツ』海堂尊

2008/03/31 (月)  カテゴリー/小説(一般書)

 曾根崎理恵は人工授精のスペシャリストで帝華大学産婦人科で教鞭をとる傍ら、個人病院「マリアクリニック」で診察を行っている。マリアクリニックの院長・茉莉亜は病に冒され閉鎖が決まっているため、理恵が5人の妊婦の診察をするのみとなっていた。茉莉亜の一人息子の久広医師は極北病院に長く勤めていたが、医療過誤で逮捕されてしまった。理恵はその不当性を訴え、結果的に大学の教授を動かしたのだが、厚労省批判を続ける理恵はそれ以来屋敷教授から睨まれているのだ。
 ところが理恵が診察している5人の妊婦に代理母疑惑が浮かび上がる。誰が密告したのか、なぜ理恵はそれに加担したのか。5人の妊婦がそれぞれの妊娠と向き合う姿と、産科医療の現状を描いた物語。

 理恵は”クール・ウィッチ”と呼ばれているそうで…冷静であるけれど、と読み進めていましたが、最後でどんでんがえしが待ってます。魔女と云うか人としてどうだ?とも思いましたが、まあ物語的にはよいのでしょう。
 「螺鈿」や「黄金地球儀」よりは、とても読みやすくて納得できる内容でした。まず産科医受難の時代という話題のタイムリーさ。その意味では今までの作品の中では、より社会的かもしれません。出てくる5人の妊婦さんも分かりやすい(と云っては失礼ですが)パターンで、未婚の母、多忙のバイヤー、自然妊娠の主婦、5年以上の不妊治療を乗り越えて妊娠した人、そして55歳で人工授精で妊娠した人…さらにそれぞれにリスクが課されていくと。でもそのリスクも決して珍しいことではないし、高齢出産に伴うリスクはそれこそ日常的に新聞の話題にもなるほどです。理恵はそれを患者に理解してもらう努力は怠らないし、その意味では好感度が高いと思います。そしてこれまでの海堂作品の中では珍しく現状を打破するために厚労省と真っ向と向き合っています。後半はいつものドタバタでどんでん返しですが、それもまた…よし(笑)
 それに読んでいて理恵の云う「奇跡」に納得してしまったからかも。医学生に講義するシーンが多く挟んであるので、生命誕生までを分かりやすく解説してあります。

 以下、ネタバレあり。

ジーン・ワルツジーン・ワルツ
(2008/03)
海堂 尊

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『ほんとはこわい「やさしさ社会」』森真一

2008/03/31 (月)  カテゴリー/小説以外(一般書)

 「やさしさ」「楽しさ」が無条件に善いとされ、人間関係のルールである現代社会。それがもたらす「しんどさ」「こわさ」をなくし、もっと気楽に生きるための智慧を探る。(裏表紙より)

 という本だそうです。まさにこの通り。よく新聞とかにも書いてあるよね〜という感じ…と云ったら失礼ですね。こういう本を読む楽しみは自分が漠然と感じていることを言葉にしてくれるというところにあると思うのですが、その通り。あっちで気遣い、こっちで気遣いしていて結局何にも出来ていない不思議な現代社会に、ちょっと波風立ててみたけど、ありゃ何にもならなかったね…という読み応えでした。
 内容を否定しているわけではないです。納得できる部分は多いのだけれど、でもどうしようもないよ…という気持ちが勝ってしまうのです。今の「やさしさ」に満ちあふれた世界には辟易しているけれど、抜け出す勇気もないんだし。←やさぐれ

ほんとはこわい「やさしさ社会」 (ちくまプリマー新書 74)ほんとはこわい「やさしさ社会」 (ちくまプリマー新書 74)
(2008/01)
森 真一

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『プークが丘の妖精パック』ラドヤード・キプリング

2008/03/30 (日)  カテゴリー/小説(一般書)

 ダンとユーナはペベンシー近くのロングスリップにある<野外劇場>で「夏の夜の夢」の練習をしていた。そこに突然妖精パックが現れる。彼らは”オールド・イングランドの最も古き丘”の麓にある妖精の輪の真ん中で3度演じることで、パックを呼び起こしてしまったのだ。パックに<占有権>を与えられた2人は、古い住人たちを会話が出来るようになる。パックが導く歴史上のの登場人物たちが語る物語。

 評判のよい光文社古典新訳文庫、いつかいつか『カラマーゾフ』位は読まねば!と思いつつ手にとらず。しかし、この本だけは何故か読むんだ!という強い意思(笑)に負けました。読んで納得。面白いじゃないか!
 1話目は「ウィーランドの剣」というルーン文字の刻まれた剣の物語。ウィーランドは海をわたって来た神で、その後落ちぶれて鍛冶屋になっていた。そのウィーランドが見習い僧の言葉で救われ、その僧に剣を授けるまでの物語。後に続く話の伏線になってます。神話系の話です。
 見習い僧のヒューが出てくるのが2話目の「荘園のふたりの若者」。この話がイイ!リチャード卿が子どもたちに物語るのですが、リチャード卿が敵として出会ったヒューと兄弟になるまでの話。これは騎士もの歴史もの。
 3話目は「騎士たちのゆかいな冒険」。年老いて妻を亡くしたリチャード卿がヒューと共に思わぬ冒険をしてしまう話。フツーの話だと思ったら、俄然冒険譚になってしまう驚きの展開。つ…ついていけない(笑)。確かにタイトル通りなのですが、あまりに急な展開だったので、2話目とのギャップに驚きました。すっかりヒューの虜になった私…
 「ペベンシーの年寄りたち」が4話目。3話目が嘘のような真面目な歴史譚。昔の上司アクイラの元を訪れたリチャード卿とヒュー。アクイラを貶めようとする陰謀に立ち向かう老人3人組(笑)。軽快な歴史もの。
 5話目の「第30軍団の百人隊長」はローマンブリテン末期の話(でいいのかしら)。ユーナがパチンコで遊んでいるとパルネシウスが突然現れ、投石機に感動するところから始まります。ハドリアヌスの防壁が出てきます。この辺はサトクリフ好きは外せませんよ!なぜなら、サトクリフもこの作品の影響を受けているらしい。将軍マクシムスに認められて百人隊長となるまで。短い。
 6話目の「大いなる防壁にて」では北の防壁についたパルネシウスは隊員たちのひどい状況に愕然とする。しかしそこで得た無二の親友パルティナックスと共にピクト人のアロと狩りの仲間となる。アロに導かれ将軍マクシムスと再会し、その才覚を買われた2人は、防壁の指揮官となる。この話も面白かった!
 で7話目の「翼のかぶと」でマクシムスの「3年間」の言葉を信じて防壁を守る2人だったが、ローマで闘っているマクシムスの形勢もよくなく…。2人は無事防壁を守りきれるのか!という…なかなか…読ませる話でしたよ。好きだ〜
 8話目から別のシリーズ。「図面ひきのハル」…これは歴史上のことを知らないと面白くないのかな。冒頭の詩は別の話でより意味を持ったような。
 9話目「ディムチャーチの大脱出」で今までちょこちょこと名の出て来たホブデンじいさんの謎が解けます。最初にパックが云っていた<丘の住人>たちが去っていくときの物語。背景に宗教革命がある。
 10話目「法と宝」ユダヤ教に預言された王の話。マグナ・カルタに関わったユダヤ人のカドミエルの物語。ここで3〜4話目が伏線だったことに驚く。

 とにかくイギリスの歴史を知っていたら、もっと面白かっただろうと思います。でも知らなくても楽しめます。歴史って学ぶだけじゃなく、このように体験することが出来ればどれだけ楽しいでしょう。ローマン・ブリテン好きの方には特にオススメです!!

 訳は金原瑞人と三辺律子というどちらも名翻訳者。なので大丈夫だろうと思いましたが、が、が、軽すぎたかなという気もする。でも「今の言葉で」というのがこの文庫の基本なので、あまり古典らしい訳になっていないのがいいのだろうと思います。物語は古典ですが、訳は軽め。賛否が分かれるところ…に違いない(笑)。

プークが丘の妖精パック (光文社古典新訳文庫)プークが丘の妖精パック (光文社古典新訳文庫)
(2007/01/11)
キプリング

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『TOKAGE 特殊遊撃捜査隊 』今野敏

2008/03/25 (火)  カテゴリー/小説(一般書)

 警視庁・特殊犯捜査係『SIT』に企業誘拐の通報が寄せられた。トカゲの一員・上野はその応援に回される。上野が配属されて初めての大きな事件は、業界大手のひので銀行の社員3人が誘拐されたというものだった。調査に当たる警視庁と犯人の駆引き、それを抑えようとする新聞記者とのドラマを描く。

 ううう…もっと面白いかと思った…と云ったらマズイかな。物語がとても中途半端だったかも。途中盛り上がったと思ったら、きゅう〜んとしぼんでしまったような。前半はすごく良かった。新米の上野、先輩の白石涼子(←美人で頭が良く、バイクも乗りこなす素敵な人)、冷静な高部係長、交渉係の加賀美主任が主なキャスト。加賀美主任と犯人の交渉シーンはなかなか。途中振り込む日が日曜でした!というのには本当に驚いたが…おかげで話が面白くなっていくのですけど。また、高部係長が冷静に判断を下す一方、アホな上司が先走ってさらにまずい展開にというのもお約束で、高部係長カッコイイという流れになるでしょう(ならんか……)。高部係長と涼子が事件を解きあかしていくのもセオリーでしょう。
 これだけ面白くする要素は揃っているのに、なんだか自己紹介で終わってしまったかのような終わり方なんですよ。ええ??これで終わり?という感じ。新聞記者の上野という遊軍記者が良い動きをしているのに、途中まで面白かったのに。バブルがはじけた後、銀行がああだったこうだったという世相も反映していて、なかなか良かったと思うのですが、続編があることを期待し「これは導入だ!」ということにしてほしい1冊。

TOKAGE 特殊遊撃捜査隊TOKAGE 特殊遊撃捜査隊
(2008/01/11)
今野 敏

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『静かな爆弾』吉田修一

2008/03/25 (火)  カテゴリー/小説(一般書)

 テレビ局に勤める俊平が公園で出会った女性・響子は耳が聞こえなかった。それまで自分のまわりにはありとあらゆる音が溢れていたが、その世界は聞こえない彼女が住む世界とは全く違うのだということに俊平は気がつく。響子に側にいてほしいと思いながら、その思いに違和感を感じる俊平。しかし彼が大きな仕事をやり遂げ帰国すると、響子は姿を消していたのだった。

 何度か目を通していたけれど、ようやく吉田修一さんの本を1冊読み切れました(笑)。苦手?苦手と云うか…あまり波長が合わないと云うか、掴みどころがないというか。純文の方かと思いきや、エンタメ系だったりでよく分からない?という感じ。代表作『悪人』は完読できていませんが、テレビの世界で生きているのだな…というのを感じてはいました。
 この本は恋愛小説でした。どっちに分類されるのかは分かりません。
 物語的にはエンタメだけれど、ときどきズンとくる描写があってエンタメっぽさを排除している。やはり純文なのかなあ。
 響子は耳が聞こえないので笑顔でモノを語る。しかし自分が目の前に立たない限り、彼女に触れない限り、自分の存在に気がつかないこともあるのです。テレビマンである俊平には映像と口から発せられる言葉が全て。響子には自分の思いを要約してメモに書いていかなくてはならない。だけれど仕事でうまく行かなかった愚痴も、響子が側にいて理解できていなくても少し心が晴れて行く…。言葉は人に思いを伝えるのにはとても便利なのに、うまく操れず意外と不自由なものでもある…ということなのかな。
 読後感はすっきり。

静かな爆弾静かな爆弾
(2008/02)
吉田 修一

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『阪急電車』有川浩

2008/03/25 (火)  カテゴリー/小説(一般書)

 実在する「阪急今津線」を舞台にしたオムニバス小説。
 同じ電車に乗り合わせ乗客たちが、直接声を掛け合ったり横目で見たりして少しずつ関係が繋がっていく。 
 
 えんじ色のかわいい車体の阪急線。関西方面に行った時にはよくお世話になっております。うちの地方にある自分で開けるしかない自動ドアもローカルだけれど、地元があれだけ乗りまくっている路線こそ、真のローカル線かもしれません。
 で、その阪急の中でも地味目な今津線がモデル。宝塚線から出ているこの路線、片道約15分と云う短い時間に若者たちの様々なドラマを織り込んであり、いやいやお見事。一駅一駅なので一つの話が大変短く、その分余計なものを描いていないというのもあるし、ちょっとずつ繋がっていくのはやはり読んでいて楽しくなります。主人公は若い人たちが多いですが、少し年配の女性など入っているあたりがより庶民的で(笑)。一話目で図書館を持って来たところにもガッチリ掴まされたのかもしれませんが、早々そういう出会いはないでしょう。
 一番物語に関わりを持つ翔子が印象的でしたねぇ。自分に自信を持ちつつ、ぐらぐらに揺れつつ、取り戻していくという過程が描かれているのが彼女。有川さんらしいキャラクターでした。あとは田舎出身大学生カップルか…この微笑ましさも有川さんらしい。復路の小林駅の話もなかなか…ああいう風に手を差し伸べられる翔子はやはり素敵だと思います。

 話の一つ一つは短いため、これは面白い!!という印象はあまり残りませんでしたが、サラリと読めてなおかつ清々しくて、とても好感を持てる話でした。

阪急電車阪急電車
(2008/01)
有川 浩

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『医学のたまご』海堂尊

2008/03/20 (木)  カテゴリー/小説(児童書)

 中2の曾根崎薫は「日本一の天才中学生」として東城大学医学部で医学の研究をすることに。しかし実際はそのテストが薫の父親が作ったもので、それを過去に解いたことがあったため好成績をとってしまったのだった。コミック雑誌を愛読し、英語もからきしの少年が入った総合解剖学教室には、お金と名誉を大切にする藤田教授、薫と同じコミック誌を愛読する桃倉助手、そして薫と同じスーパー中学生として医学部に入った佐々木がいた。本当は全く医学の知識がない薫は同級生の医学オタクの三田村と幼なじみの美智子の協力で、学力をごまかしながら医学部に通う。ところが薫の実験が世紀の大発見となり、周囲は大騒ぎになるのだが…

 海堂先生、児童書に挑戦(笑)
 まあ…日経メディカルという雑誌でこの内容で連載されていたというのはどういう位置づけなのでしょう。お医者さんの癒し系…とか。しかし2008年1月号まで連載していたというのに、すごい早さで単行本になってますけど(驚)
 物語はテキトーなことをやって”天才少年”となってしまった薫が、最後には「論文捏造」という大問題に立ち向かうという勧善懲悪もの。そういう意味ではミステリーなのかしら…でもバタバタしているうちに終わってしまって、ミステリかどうかなんて分からないままです。
 もともと海堂さんの小説は人物造形が粗いというのが印象ですが、今回も「おーいおーい」と突っ込みたくなるような人が沢山。でもバチスタ以降のシリーズを読んでいれば分かる人が結構出ています。人物についてはその程度。歴史オタクの薫より、中学生で論文読んだりするヤツいるのかな。全てが架空だからいいのかな。でも頭の良い子たちは医学書だってすらすら読めてしまうのかしら。私とは全くの別世界……、その点やはり病院の中の人の方がリアルでした。あと不思議なのがパパですが、ゲーム理論研究者だからか(?)何か達観しているような。不思議な親子でしたね。
 あとは、登場人物に懐かしい人を捜すゲームをしていました。グッチーはかなり最初に出てあとは出て来ない。ぶーぶー。でもびっくりした。大学に何があった!と思ったら、どうも一度は潰れたらしい。おお??でも高階さんや翔子は残っているんだとか、あの様子では速水先生は東城大学に戻って来なかった(戻ってきたが再び去った)とか、考えるポイントは多かったです。他もろもろ……楽しみ方が違いますね。
 この本を読んでお医者さんを目指す子どもたちがいるのかどうかは分かりませんが、小説のうまい下手より海堂さんは自分の云いたいことはうまく小説に盛り込む人だと思います。終わり方もいつもの通り爽快…(か微妙だけど)大どんでん返しでカラリと終わります。こういう力を持った人って、どの世界にも一人はいてほしい・・・・

医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!)医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!)
(2008/01/17)
海堂 尊

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映画『犬と私の10の約束』

2008/03/12 (水)  カテゴリー/映画

 あかりは勤務医の父と優しい母の3人暮らし。ところが母が倒れ入院、1人家にいるあかりのもとに迷い込んで来た子犬を飼うことになった。犬はソックスと名付けられ、母は犬を飼う時には犬と”10の約束!をしなくてはならないと教えてくれる。やがて母が亡くなってしまい、ショックから首が動かなくなったあかりだったが、ソックスのおかげで首が動くようになる。ソックスと父と3人の暮らしに馴染んでいくあかりだったが、父が転勤することになってしまう。ソックスを仲の良かった星くんに預けて札幌へと引っ越すあかりだが…
 14歳の少女が母の死を超え、ソックスと共に成長していく物語。

 試写会の場所取りに呼ばれて参戦、どうせ泣くだろうし…と思いましたが、案の定。だって家には12歳の老犬が!!
 物語の軸は「犬の十戒」だそうです。「わたしにはあなたしかいません」…これってそんなに有名だったんですか???「千の風」ブームに乗っかったのでしょうか。キャストも脚本も…何だかねえ。亡くなったお母さんが「私は風になります」って、なんでここで千の風…とガックリ。いや、「千の風」を否定するわけではないですが、どこまで「千の風」ブームなのかと思うとあきれてしまうというか。
 田中麗奈だってトヨエツだって福田麻由子だって加瀬亮だって下手な役者を使っていないのになんて薄っぺらいドラマ…。確かに泣けます、がいかにも「今からお涙ちょうだいしますよ〜」という展開はあまりにベタで…。エンドロールで本木監督ということを知って、隣の人と「本木さん??」と声を揃えてしまったくらい。脚本だって悪くはないと思うのだけれど、何ででしょう。う〜〜ん。ソックスは何匹もいるようですが、最期のシーンはお見事です。流石タレント犬!!合間合間に見せるソックスの仕草に見に来ていた子どもたちからも笑い声が聞こえていましたので、是非子どもさんとご一緒に。冷めた大人には向きません、ええ…。

2008 本木克英監督

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『リボン』草野たき

2008/03/10 (月)  カテゴリー/小説(児童書)

 亜樹の所属する卓球部には、卒業する先輩に制服のリボンをもらうという伝統がある。人気があるのは「試合で勝つ」より「彼氏持ち」の先輩、亜樹はじゃんけんに負けてどちらでもない池橋先輩にもらうことになった。しかし声をかけると池橋先輩はくれなかった。しかも美佳からダブルス解消され、今更ながらシングルスに転向することになる。
 家では何でも出来る姉と母が常に衝突し、気がつくと亜樹は波風を立てない生活を営むようになっていた。クラスでもそっと友人をさがし、やがて物静かな藤本さんと親しくなる。藤本さんは卓球に全く関心がないのだが、亜樹が卒業式以来抱えて来た思いを藤本さんが受け止めてくれたことから、2人は友人同士となった。
 中学3年生の微妙に揺れ動く心を描いた作品。

 中学3年、これほど大事な時期はないかもしれません。限られた選択肢のなかでわずかに上下する成績と比較しながら高校を選ぶ…まるで高校入試で人生のすべてが決まってしまうかのような閉塞感。そして入学してからの目立たず、何事も無く学校生活を送ろうとする気苦労だけは残る。何かの本で、最近の子どもたちは友だち関係に本当に神経をすり減らしているというのがありましたが、さもありなん。それは今に限ったことではないように思いますが、私たちの頃からすると今の小学〜高校生はまさに「神経をすり減らしている」と思うことが多々あります。
 主人公の亜樹は卓球部。池橋先輩にリボンを貰えなかったことは、決して物語が動くきっかけではないように思います。クラス替えで友人がいなくなり、居場所を求めてたどり着いた物静かな藤本さん。家族にも部活仲間にも波風を立てないように、体面だけを合わせて来たこれまでと違い、無理に会話を続ける必要がないため、亜樹は少しずつ藤本さんの側に安らぎを感じるようになります。やがて藤本さんの見たことの無い一面を見たり、反面教師だった姉と母の確執を見たり、決して派手ではないちょっとした日常生活の変化が亜樹を変えていくという、草野さんらしい物語。
 見かけはすごく変わったというわけではないけれど、亜樹は1年前とは変わっています。無個性のなかの目標でなく、自分と云う個性を認識できたから…かな。悪目立ちすることが個性じゃなく、”自分”ってものを確認できることができたことが成長なのか。これってこの世代特有のものですよね。
 さすが進研ゼミで連載されたというだけあり、無難にまとまりつつ受験も成功という横軸は見事(笑)です。
 しかし、無難…なのよね。とりあえずY.A.で、無難にオススメ出来る本ではあるのですが、強い力を持った作品ではないかも…。

リボン (teens’ best selections 11)リボン (teens’ best selections 11)
(2007/11)
草野 たき

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『ハチミツドロップス』草野たき

2008/03/10 (月)  カテゴリー/小説(児童書)

 密かに”ハチミツドロップス”と呼ばれているソフトボール部は、運動で青春を謳歌しようという部活ではない。お気楽にいい加減に、サボりたいヤツはサボればいい…と全く運動部らしい活動をしていないドロップアウトした部員ばかりだった。カズはそのキャプテンではあるけれども、それもじゃんけんで負けたから。今は彼氏の直斗とクラスが分かれてしまったことの方が大問題だ。
 ところが妹のチカちゃんが友人たちを引き連れて、本格的にソフトボールに取り組もうとし、顧問の先生もはりきり始める。おかげで行き場を無くしたカズたちは行き場を失い”ハチミツドロップス”は解散となる。
 しかも彼氏の直斗からは別れを告げられる。それでもカズは”カズ”らしいスイッチを入れ明るく振る舞う。父がいないときに母が落ち込んでいると、カズはカズらしく振る舞うことで家族を保ってきた。チカちゃんが父のおみやげの誰も食べない駄菓子をとにかく食べきることで父をつなぎ止めるように、カズはカズらしくあることで家族を保っているのだ。
 しかし”ハチミツドロップス”という拠り所を無くしてしまい、それまで”ハチミツドロップス”で集っていた時間が空いてしまい、何もすることが無くなってしまう。渋谷にナンパされに行っても、そこで同級生が男の人と歩いていても、話をすることも無くなってしまう。おちゃらけることで関係を保って来たのに、やがて本気で友人たちと向き合う時がやってくる…。

 読んだけどすっかり忘れていたので、メモる。本当に前回は何を読んでいたのか…ネタが尽きたからこれ紹介するかと思ったら、全く覚えていなかった。
 というわけで再読。いい話でした。前回は流し読みしすぎたかな、ハチミツドロップス追い出されてからの展開覚えていないもの(笑)。根元にあるものは『リボン』に近いと気がついた。
 カズは常にお気楽、ときにはさらにスイッチを入れてお気楽を演じる。そうしないと家族が崩れていくことが分かっているから。一方妹のチカちゃんはまじめを貫くことで、家族を維持しようとする哀しい姉妹。普段その考えは相容れないけれど、根幹にあるものは同じ。ハチミツドロップスという居場所を無くした中学生たちが戯れの関係から互いの存在を認識するまでの物語を軸に、家族を必死に維持しようとする姉妹の物語が重なっています。前半は軽いノリで始まりますが、後半お母さんの具合が悪くなったあたりから話が変わってくるので『リボン』より緊迫感があり、読み応えもあると思います。
 終わり方も好きです。こういう終わり方をするとは思わなかった。あれが”ハチミツドロップス”が終わった瞬間なのでしょうが、チカちゃんのギリギリの戦いを表してもいて、そっちに泣けそうになりました。でも何にも解決していないのだ…。彼等の中学生活もまだまだ続くし、両親の問題だって全く片付いていない。なのに物語は納まっている…不思議。

ハチミツドロップスハチミツドロップス
(2005/07)
草野 たき

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『ぼくのメジャースプーン』辻村深月

2008/03/05 (水)  カテゴリー/小説(一般書)

 主人公は小学4年生の「ぼく」。「ぼく」は幼なじみのふみちゃんのことが大好きだ。ふみちゃんは1年生の頃から学級委員長をしていてみんなに頼られて、そして意外としゃべりたがり。そして「ぼく」は誰よりもふみちゃんのことを知っている。「ぼく」が不思議な力を持っていることに気がついたのも、小学2年生のときに落ち込むふみちゃんを励まそうとしたときのことだった。
 小学4年生になり、ふみちゃんは誰よりもよく学校で飼っているウサギの世話をしていた。ところがそのウサギが大学生に惨殺されてしまったのだ。それを最初に見つけたふみちゃんはそのショックから心を閉ざしてしまう。笑わなくなってしまったふみちゃんを助け出したい「ぼく」は、力を使い犯人の大学生と対峙する機会を得る。力を使うことに反対しているお母さんの命令で、同じ能力を持つ大学の先生のところへ通うことになった「ぼく」。ウサギを殺した犯人に与える罰の重さは…

 『名前探しの放課後』を読むにあたり、何か他の本も読んでおこうと読み始めた本。結果的には大正解でしたが、こちらも中々好い本でした。
 大学生の市川はテレビで報道された車椅子のウサギを見て、それを殺そうと目論みます。ウサギ殺しの映像を撮ったのみならず、第一発見者が驚く様子を撮らえていたのです。それにより「ぼく」の大好きだったふみちゃんはすっかり感情を無くしてしまい、学校に来なくなってしまいます。心配していた友だちもやがてふみちゃんのことを気にかけなくなってしまう…ふみちゃんが学校に来ていた時にはあれほどふみちゃんのことをあてにしていたのに。「ぼく」が風邪で休んだためにふみちゃんが第一発見者になってしまった罪悪感と、ふみちゃんの気持ちを踏みにじった犯人への憎しみと。しかし法律上市川は刑務所に入ることはないのです。どんなに悪意があっても。
 この「裁かれない悪意」というのに、ある意味正面から向かった小説なのだなあと思うと、すごい。もちろん法律でどうにか解決できるものでもないので、そこからは「ぼく」の不思議な力に頼ることにはなるのですが、その力を行使する上で秋先生が様々なパターンで罪の重さを計ろうとする、その過程は全くファンタジックではなないので、真剣に読んでしまいました。豚をクラスで飼って「色」について考える授業…は私も大学の時に見ましたがあれはすごい、本当にすごい授業でした。あのクラスが出した結論が正しいかどうかじゃなく、彼等が結論を出すまでが授業だったのだろうと思いますが、他のどんな授業よりも印象的でした。こういう話が妙に話に現実感を与えているというか…。
 ということでかなりのめり込んでしまいました。だから「ぼく」が持っている力(ゲームを提示する能力)をどう使おうとするのかというのも、かなり真剣に読んでしまいました。トラウマを持ってしまうと、周囲が思う以上に自分を追いつめているのだという哀しい部分がもう…泣けて泣けて。ツボを押されまくり…
 常に罪と罰について考えて来た話なので重たいですが、ラストにはちょっと希望が持てて良かったと思います。

 とりあえず2作品を読んでみて、話の中にうまくポイントを隠す作家さんだなと思いました。他作品はいずれ…あちこちの作品が繋がっているようなので。とにかくこれを読んだら『名前探しの放課後』を読みましょう!!あ、最近多い「心身症」や「ストレス障害」「PTSD」と合わせて読むのもオススメです(笑)

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)
(2006/04/07)
辻村 深月

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タグ : Y.A. ウサギ

『ハーフ』草野たき

2008/03/05 (水)  カテゴリー/小説(児童書)

 主人公・真治は父母と3人暮らし…なのだが、母というのはヨウコという名の茶色の毛並みの犬なのだ。小さい頃から母はヨウコだと聞かされた真治だが、もうすぐ中学生という年にもなれば、自分の母親がヨウコではないことは分かる。でもパパはヨウコのことを本当に愛している。父と子、犬1匹の家族の行く末は。

 今の日本では犬を本当の家族のように可愛がり、まさに「家族の一員」となっている家庭は決して珍しくないでしょう。この本はそれをちょっと斜めに見てみた… という感じ。父は真治が小さい頃いなくなった妻が犬になって帰って来たんだと言い張り、それこそヨウコを人間以上に溺愛している。一方そんな筈はないと思っていながら、父との関係を維持するためにそれを受け入れざるを得ない真治。しかし思春期ともなれば、そのような家族関係がいじめの原因になることは明白。さらにヨウコが行方不明になってしまい、父が取り乱してヨウコを捜索する様子がバレてそれがますますからかいのなる始末。おかげで真治は本音を父に明かすことが出来、自分がいじけているだけだということも理解でき、さらには本当の母のことを叔母に尋ねる勇気がでてくる。本当の母親がいつか現れるという期待は無惨にも打ち砕かれますが、逆にそれにより父と一緒に暮らしていく決意が固まっていく…。
 結局ヨウコの失踪が父子2人の生活を変えた訳で、その意味ではしっかりヨウコは”母”だったのでしょう。父もあんな形で妻を失って、何かでバランスをとらざるを得なかったのかと思うと、かなり切ないです。短いお話ですが、うまくまとまっていると思いました。
 装幀も大変かわいらしいです。

ハーフ (teens’ best selections)ハーフ (teens’ best selections)
(2006/06)
草野 たき

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『バディ たいせつな相棒』V.M.ジョーンズ

2008/03/05 (水)  カテゴリー/小説(児童書)

 ジョシュはスポーツ万能の13歳の少年。両親は離婚し、今は父親とそのパートナーであるスーザンと暮らしているが、それまでの父との暮らしが変わってしまいジョシユは不満だらけだった。ジョシュには互いに”バディ”と呼び合う双子の兄がいたが、7年前の事故のあとリハビリセンターで過ごしている。ジョシュはこのことを学校の誰にも打ち明けることはしなかった。
 担任の先生の産休代用教員のミッチ先生がやってきた。その先生がクラスに紹介したのがトライアスロン大会だ。個人でもグループでも申し込みが出来ることを知り、最初はグループで申し込むつもりだったジョシュだが、ライバルのシェーンが個人で申し込むことを知り、自分も個人で申し込むことを決める。子どものころの事故のトラウマで泳げない彼は、ミッチ先生にそれを打ち明け個人レッスンを受ける。泳げるようになったジョシュは万全の状態で初のトライアスロンに挑む。

 トライアスロンに打ち込もうとする少年…という点ではスポーツ小説のようですが、どちらかと云えばトラウマ・友情・家族がテーマの青春小説です。転校した学校でスポーツ万能な完璧な自分を創り上げたジョシュには、今の家族の状態は受け入れがたいものです。スーザンとの生活はジョシュの生活リズムを乱しますし、水泳の季節ともなれば泳げないことがバレないように隠さないと行けないし、泳げないことを言えば事故にあった双子の兄のことも云わなくてはならなくなる…自然に溜まってくるこのストレスを乗り越えるきっかけがトライアスロン大会だった…ということになるのかな。
 もちろん途中には家族との和解が出てきますので、気をてらった展開は全くありません。やはり人生を豊かにするものって、人との出会いなのでしょう。ミッチ先生がいなければ泳ごうとは思わなかったでしょうし、泳ぎきったことでバディのことを受け入れることが出来、そしてシェーンという友人を得ることが出来る。
 ……どうでしょう、文句なくセイシュン小説として成り立っているでしょう、文句なくセイシュン小説なんですよ。

 色々な賞を受けた話題作邦訳!という目出たい宣伝文句がついていますが…地味目(笑)でした。内容は悪くなかったと思います。

 しかし、最近は欧米モノも日本モノも内容が似て来た気がする。

バディ?たいせつな相棒バディ?たいせつな相棒
(2008/01)
V.M.ジョーンズ

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『名前探しの放課後』上下 辻村深月

2008/03/03 (月)  カテゴリー/小説(一般書)

 気がつくと3ヶ月前にタイムスリップしていた依田いつか。そして思い出す…クラスメイトがもうすぐ自殺することを。
 いつかは同じ中学出身でクラスメイトの坂崎あすな、友人の秀人、秀人の友人で生徒会長に立候補する予定の天木、秀人の恋人椿とともに名前を思い出せないクラスメイトの自殺を止めようとするが…

 あんまりあらすじを書くとつまらなくなるので上っ面で。
 タイムスリップした主人公というのはありきたりではありますが、SFというよりは人物探しのミステリです。でも途中「あいつだ」という人が出て来て必死で自殺を止めようと画策し始めると青春小説、そのままラストへ…というまあまあ見事な青春小説でした。甘酸っぱい・・・・・・(古)
 登場人物も分かりやすいです。いつかはモテモテだけれどケガで水泳の道を断たれたという傷を持つ。対するあすなはクラスでも目立たない存在。秀人は明るくどこでも中立(本人の言葉で云えば”歪みを繰り返しながら正方形に近付いた”)の立場、一方の天木は将来生徒会長になる自分を意識していつかに協力するなど、青春小説に欠かせない造形っぷり。
 それに話の盛り上げ方もうまかったです。読んでいて「?」と思った部分が、少しずつパーツが埋められていって、その瞬間が訪れる…という後半部分まで。引き込まれて読みました。これは一度読んでから、もう一度読み返すのがミソですね。
 それに舞台設定が…あの田舎っぷりがすごく身近に感じて、目の前に光景が広がって読めたのもポイントが高いです。ジャスコってあたりがねえ、高校生の財布をリアルに表していて好きですよ(笑)。
 しかしエピローグは…物語としてはうまくまとまっているのですが、あの告白は…。もうちょっと、何か説明が欲しい。あの力を否定するわけではないけれど、このオチかっ!と思ったのは正直なところ。
 でも何度も読み返したし、好きな話なのは間違いないです。

 以下、未読の方はオチをばらしているのでお気をつけ下さい。


名前探しの放課後(上)名前探しの放課後(上)
(2007/12/21)
辻村 深月

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名前探しの放課後(下)名前探しの放課後(下)
(2007/12/21)
辻村 深月

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『“文学少女”と月花を孕く水妖』ほか 野村美月

2008/03/02 (日)  カテゴリー/小説(一般書)

 中学生のとき同級生の美羽に感化されて応募した小説が入賞したことで美羽を失った井上心葉(このは・男)。もう小説は書かないと決意していたが、高校生になった今、彼は文芸部部長の天野遠子のおやつとなる物語を書き続ける日々を送っている。遠子は物語を”食べてしまうくらい”愛している妖怪もとい文学少女なのだった。やがて遠子やクラスメイト芥川や琴吹ななせたちとの出会いが、人と関係を気づくことに臆病になっていた心葉を変えていく…。

 媚びる訳ではないけれど、やはり中学生に本を紹介するときラノベも入れなくては…という妙な義務感で今回はこれを読んでみました。
 物語は遠子が周囲で起きた事件を解決するときに文学作品を下敷きにするという展開が基本。遠子は普通の食事の味を感じず物語のみを味わえる体質だそうで、文学作品を美味しく頂きつつ、心葉の書いた”3題噺”をおやつに頂く日々。設定としては面白いと思う。宮沢賢治や嵐が丘など「タイトルは知ってる」と思わせるものや、「ふ〜ん」というマメ知識を美味しく解説してくれますし、文学的な評価やうんちくも欠かしません。
 ただ……なぜみんなこんなにストーカー??小説にトラウマは欠かせませんが、やけにストーカーちっくな人が出て来て、ちょっと辟易もしました。このシリーズは「文学」「ストーカー」「復讐」で統一されているのかしら…。1巻は延滞されていて未読ですが、2巻(飢え渇く幽霊)は「お〜いお〜い(汗)」と叫びたくなるような不気味な展開でいよいよホラーかと思いました。一応暗号も出てくるのでミステリですけど…。が、3巻当たりからミステリらしい展開になり、この辺から読むに耐えうるようになりました(笑)。4巻(穢れ名の天使)くらいで、いよいよ心葉に成長が見え、この辺から親の気持ち(笑)。6巻(月花を孕く水妖)は特別編ですが、2巻の後の話ですが5巻を読まないとつまらないです…作者はもう完結に向けて走っているようですね。
 登場人物たちもとても分かりやすいです。物語は事件が起き解決するパターンですが、シリーズのの流れ自体は傷ついた人たちの再生の物語となっているようなので、その意味では安心して読むことが出来ました。挿絵も可愛らしくて、人気シリーズになったのも分かります。
 しかしあれだけ大量生産されるラノベで生き残るのも大変そうです。そして見ていても区別がつきません。もう、こういうのについていける年じゃない…はぁ。

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)
(2007/12/25)
野村 美月


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“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫 の 2-6-5)
“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫 の 2-6-4)
“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)
”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)
“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)

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映画「ラスト・コーション」

2008/03/01 (土)  カテゴリー/映画

 日本占領下にある中国、チアチーは家族と離れ一人香港に残っている映画好きの大学生だった。チアチーは友人のシュウチンが誘われた学生芝居に参加し、中心人物のユイミンに好意を抱く。彼等の学生芝居は大好評を博したが、ユイミンは特務機関のトップであるイーの暗殺を企み、彼等もそれに同意する。チアチーが”マイ夫人”となりイー夫人へ近付くことに成功するが、彼等の陳腐な作戦はイーの転勤により敵わず、それどころか失意の中でイーの部下を殺してしまうことになり彼等は散り散りに。3年後上海で学生をしていたチアチーはユイミンと再会、抗日活動をしているユイミンと上司ウーに請われ、チアチーは再び”マイ夫人”としてイー夫人の元を訪れ、イーと再会する。狙い通りイーと愛人関係となったチアチーだったが、噂通り冷酷で隙のないイーに惹かれていく。

 占領下の香港・上海の階級社会と麻雀のルールを知らないと面白くないのでは。
 まずチアチーたち、学生たちはかなりおぼっちゃん、おじょうちゃん…なのですよね、多分。一人はお父さんからお金を借りて、洋風の家を借り切ったり上流階級らしく服などを用意していますし。チアチー自身も父がイギリスに行っているのも貧しいからではないようです。ただチアチーは家族と引き離され孤独または引け目を感じているようです。そのため一度演じることに目覚めた彼女は”マイ夫人”を演じることがそれを忘れ去れてくれる楽しみでしかなかったように見えます。しかし所詮学生が思いつきで始めた暗殺計画、あちこちにほころびが見え、見ていてこの程度か?とあきれさせるくらい隙だらけ。案の定資金も潰え、計画がバレてしまう。「つ・・・つまらない」と思っていましたが、ここからもまあ、ありきたりな筋書きでした。イーを演じたトニー・レオンはいつになく老け役というか、年相応な感じ。脇役はすごく固くてよかったです。チアチーはあまり色気を感じない…美人だし綺麗なんだけど”マイ夫人”のときに出てくる幼さは演技指導なのか、可愛らしすぎ。
 もともと小説か元ネタがあったようで、話自体はありきたりですし悪くないと思うのです。過激な描写が噂になっていたようですが(観に行くまでR18だと知らなかった)、互いに気を許せないもの同士が求め合い、しかし互いの本心を知られないような駆引きを続けながらという描写をしたいのかな…と思うとまあしょうがない気もしますが、長くて疲れました。それまでの微妙なアイコンタクトやちょっとした仕草で見せている駆引きのときがよかったです。ああ、その仕草の意味を知るには麻雀のルールを知らないといけないようです。イーはチアチーが勝てるように牌を捨てていたらしいので…。
 映画自体は悪くないと思うのですが、何だかもの足りない映画でした。多分前半なくても良かった気もします。でも3年前の彼女がいないことには成り立たない物語ですし。あの3年前のあまちゃんだった学生時代が何だか腹正しい。こないだ観た「サルバドール」だって、同じように反政府活動したきっかけは甘い動機だったと思いますが、何故だかこの映画だと許せない(笑)。後半は悪くなかったです。

アン・リー監督 2007

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