『ふたりの証拠』『第三の嘘』アゴタ・クリストフ
2006/11/30 (木) カテゴリー/小説(一般書)
国境を越えてから50数年が過ぎ、相互の訪問が可能となり双子の片割れ・クラウスが国境の町を訪れリュカを探そうとするものの見つからず、ビザの期限が切れたクラウスは強制送還されることに。しかし大使館の調べでリュカが詩人として活躍していることを知り、彼の家を訪れることに。リュカはクラウスを弟として認めようとせず、一緒に暮らしている年老いた母のこともクラウスに隠し通す。(『第三の嘘』)
『悪童日記』の続編ながら設定は微妙に異なる。続編というには基本設定が異なり、別の話というには似通いすぎている…という感じです。特に『第三の嘘』は『悪童日記』を元に書いたパロディのような感じですね。二人がバラバラになった理由が、『第三の嘘』ではケガのため体が不自由になったリュカが家族と離れ施設で暮らしているうちに戦争のため、消息不明になってしまう…ということになっています。『悪童日記』のような双子の密接な繋がりが5歳くらいで無くなってしまい、戦争の時期のような陰鬱な時代でもないためか『悪童日記』のような研ぎすまされた空気感はあまりありません。著者自身が亡命し、時を経て故郷を訪れたかのような寂しさが漂っている気もします。また50年経っているためか、背景にある「戦争」も少し影を潜めます。もちろん戦争もあるのですが、父母と離れ兄弟が離れた理由は父親の不倫なのですから。しかもリュカはその愛人の元に引き取られ、やがて精神病院から出てきた母と暮らし始めるものの全く幸せとは云えない生活を送り続けることに。また母のためにケガをしたクラウスも全く家族と音信のない生活を送ったために手に負えない生活を送ることになる。絡み合わない4人の家族、そして通じることがない双子の想い、二人の想いが通じるのは片割れが死んだ後というのだから、哀しいことこの上ないですよ…。
逆に『ふたりの証拠』は『悪童日記』で出てきた人物たちが出てくるため、続編という感じがします。片割れがいなくなったことで双子が放っていた冷たい空気感がなくなり、そこに父親の子を産んだ娘と優れた知能を持ちながら障害のために差別を受ける息子、同性愛者の共産党幹部、夫を殺された図書館司書、アル中の本屋など隣国に占領され閉ざされた国境の町で生きる他の人物たちの人生が絡んでくるのですが、いないはずの双子のかわりを求めているようなリュカの姿がとても哀しい。感情を持ち合わせていないかのように冷静(冷徹)だったリュカがいつの間にかマティアスに激しく執着し始める。リュカはマティアスを自分の息子のように愛しヤスミーヌから奪うものの、マティアスにはそれが通じない。しかもマティアスがリュカに心を開き始めたがために最悪の出来事が起きてしまう…という哀しみの連鎖はやりきれません。
やはり『悪童日記』を読んだ後は、この2つは読まないといけません。特に『第三の嘘』はクラウスがついた3つの嘘のことを云っているのではなく、著者がついた嘘なんだと思えます。それが故国に対するものなのか自分に対するものなのかは分かりませんが、こんなに哀しい嘘はないよな…と思います。この読後感って『平家物語』の読後感に似てます。読み終わってから何とも云えず哀しくなると云うか、がっくりするというか、「諸行無常」というか…。
読んでいるときはすごく引きつけられるのだけど、読み終わってこんな哀しい気持ちになった作品は久しぶりでした。
『第三の嘘 』アゴタ・クリストフ/ 堀 茂樹訳、ハヤカワepi文庫
『ふたりの証拠 』 アゴタ・クリストフ/ 堀 茂樹訳、ハヤカワepi文庫
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最近…
2006/11/29 (水) カテゴリー/徒然雑記
とりあえず風邪を引いてしまい、治りきらずに職場関係の慰安旅行で幹事として中国へ。
初めての上海、二度目の西安、そしてホントに初めてのプレジデント・ルーム(笑)
どこを観光したことより、ホテルの部屋が印象に残っております。
そろそろヤバイ(何がや…)と思っていそいそと活動開始、しかしこの10日近くのブランクは埋めがたく、いつぞや見た映画の感想をポチポチと打っていました。
明日には高速バスの予約をしなければなりません。
そういえば職場にあった本ですごいの見つけてしまいました。
ジーブズとかバーティの時代の服装を調べていたのですが、開いて吹き出してしまいました。
『大人の男のスーツ図鑑』(二見書房)、明らかに腐女子の心を射止めようとしています。
そう思いつつも、資料として中を見ずにいられません。スーツって描くの難しいし。
そうそう、もうすぐジーブズの新刊が出ますよ。上橋奈穂子の新刊は3冊あるし、トンケ・ドラフトの新刊もあるし、なんでこんな時期にまとめて新刊がでるかな。DWJの新刊も12月に出るみたいです(泣)
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久しぶりの台湾映画。
蔡明亮監督の作品は初めてでした。同時に「楽日」と「迷子」も公開していたのですが、見るだけの時間がなく「西瓜」だけになりました。残念。
これらの作品の主演はっている女優さん(チャン・シャンチー)が、私の敬愛する楊徳昌監督の作品に出ている女優さんでして、どんな人だろうという好奇心もあり(肝心の出演映画は近くのレンタルショップになく、見れずじまい)、あとはベルリン映画祭での評判が大変良かったことが観にいくきっかけでした。それ以外の予備知識を入れずに観にいったので、最初のシーンは「何が起きた!?」と驚いてしまいました…(汗)。そして時折挟まれる強烈なミュージカル・シーン。とにかく前半はそちらに気を取られてしまいましたが、本筋は愛に乾いた女の恋愛なんだなあ。あの乾きっぷりにはちょっと自分に通じるものも感じましたが(笑)、意外に切ない。日常は虚しく、そんな中で大切な恋人と過ごす濃密な時間があり、義務的にこなすセックスと気怠い毎日と。決して珍しくはない日常の中に広がっていく恋愛が、AVとミュージカルが引き立ててくれるような。ちょっと意外な映画でした。しかし予告で見た他の映画とイメージが結びつかない。主演のチャン・シンチーなんて同一人物とは思えませんでした。
さすが台湾。今後も期待。
難点は台湾映画が地元に来ないことだよ…。
テーマ : ☆.。.:*・゚中国・香港・台湾映画゚・*:.。.☆ - ジャンル : 映画
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『リンゴ畑のマーティン・ピピン』『ヒナギク野のマーティン・ピピン』エリナー・ファージョン
2006/11/20 (月) カテゴリー/小説(児童書)
マーティン・ピピンが自分の子を探しにヒナギク野にやってくると、そこには6人の少女と1人の赤ん坊が。自分の子をあてなくてはいけなくなったマーティン・ピピンは、少女たちに不思議な物語を聞かせてやることに。「リンゴ畑」の続編。(『ヒナギク野のマーティン・ピピン』)
エリナー・ファージョンはイギリスの有名な児童文学作家…ということは知っていましたが、ファージョン作品集は恥ずかしながら長いこと未読でした。今回東京子ども図書館理事の池田正孝先生の「スライドを見る会 in 金沢」でこの本が取り上げられることになっていましたので、ようやく着手。これがなかなか…。「リンゴ畑」は432p、重いんです。持ち歩くのが大変で、しかも寝る前に読んでいるとあまりの重さに腕が震えてくる始末(笑)。池田先生の「スライドを見る会」では、まず作家の略歴について説明があるので、それを知ってからスライドを見て作品の舞台を見てから読むと、それまで感じられなかった作品をより深く楽しむことが出来るのです。
さて「リンゴ畑」の方は意外や意外、恥ずかしくなるほどの恋愛話が盛りだくさん。男嫌いを自称する乙女たちに聞かせているわけですから、当然と云えば当然なんですが、身分差や一目惚れの多いこと…。とにかくロマンティック。活字で読むより耳で聞いた方がイメージが広がって良いような気がします。初めて読んだファージョンは「エルシー・ピドック夢で縄跳びをする」だったから?
6つのお話のなかでオススメは「王さまの納屋」と「夢の水車場」です。「王さまの納屋」は本当にそんな伝説でもあるのかと思わせるほどの描写です。「夢の水車場」は”一目惚れ+究極の遠距離恋愛+永遠の愛”と云ったところ。それに比べると「ヒナギク野」は少女に聞かせる物語という設定からか、ちょっと寓話っぽいものあります。「ニコデマスおじさんとジェンキン坊や」は”知恵”を探しにいくとか、「タントニーのブタ」になると主人公が人間でさえなくなってしまうので。池田先生の解説によれば、愛する男性・詩人エドワード・トーマス(妻子持ち)が出征したのち彼との思い出の地を歩いているうちに創作し、トーマスが戦死後まとめられたものなので、とにかくトーマスへの愛情が全て詰め込まれたような。「リンゴ畑」と「ヒナギク野」の間には16年の開きがあるので、その間に人間も変りますよね。池田先生は実際に現地に赴き、舞台になったところを写真に収めてスライドにしておられるのですが、この2作品は見事実在する地名が!!いかにもファンタジーに着きそうな名前なのに実在するというところがとても面白かったです。
なんだか読んだことがあるような雰囲気だな…と思ったら、アン・ローレンスに似ているかも。アン・ローレンスの『サマーズエンド 幽霊の恋人たち』とか『ロバになったトム』の読後感とちょっと似ているかも。
ファージョンはすでにイギリス本国では品切れ絶版作家だそうで…。寂しいなあ。日本じゃ岩波書店が頑張っていますが、どの国でも作家さんは大変です(単行本は1972初版で、岩波少年文庫は2001年版があります。ブラボー!岩波)。
リンゴ畑のマーティン・ピピン / ファージョン、石井 桃子 他
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映画『プラダを着た悪魔』
2006/11/10 (金) カテゴリー/映画
ジャーナリストを目指しニューヨークにやってきたアンディが思いがけず手にした仕事は、世界の女性が憧れる”RUNWAY"編集長ミランダのアシスタント。その仕事を1年続ければどこでだって通用すると云われ、次へのステップのためと働いてはみるものの、慣れない世界と無茶無謀なミランダの要求に振り回される。一つの事件がきっかけで、仕事へのスタイルを改めてメキメキと実力を発揮するアンディだが、一方で恋人や友人たちと過ごす時間は減るばかり。そしてパリコレに行く機会を得たが、恋人には見限られてしまう。自分のしたいことは何だったのか…働く女性の悩みを描き出したステキな映画です……とでも書けばいいのか?という感じ(笑)
とにかく話にはひねりも何もありません。「こうなるだろうなあ」というところにストンストンと落としてくるので、ある意味安定感は抜群。アンディがぼっさい格好からいきなりブランド物を着こなし始まる変貌っぷりも楽しいとは思うのですが、如何せんブランド物と縁遠い生活のため、ブランド物にアンテナが動かなかったというのもあります。そういう知識のある方でしたら、また違った楽しみがあるのだと思います。
しかし働く女性とはかくも厳しいものなのでしょうか。
あれだけ他人にも自分にも厳しい人だからこそ、ファッション界の寵児となったわけで。自分の信奉者に囲まれているだけでは仕事が成り立たないのでかけ離れたアンディを採用したわけだし、その彼女がのし上がってきたまでの彼女の苦悩ときたら如何ばかりか…!と別のところに興味津々。だからといって台風の中飛行機を飛ばせとか、そういう無茶は許されないと思うものの、憎めないどころか好意を抱いてしまいました。そう、仕事って努力とやる気が大事だけどそれだけでもやっていけないんだよ。ハハハ……はあ。
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業務連絡
2006/11/07 (火) カテゴリー/サークル
月曜日に届かないから「落ちたな〜」と別の予定を考えておりましたら、単に郵便事情がよろしくなかっただけのようで……
土曜日ナ03bでした。
今回はご近所に知り合いの方が本当にいなさそうなので、孤独かもしれません(笑)
そして雪はどうなんだ…!!
昨年は東京も大坂も雪の疲労で何をしにいったのやら…という感じで(本当に疲れてしまって、雪国から逃げた〜〜という感じ…)、何も出来なかったのでした。
今年はどうかというと、本日あられがバチバチバチッとすごい音を立てて降ってました。
雪に閉じ込められても間に合うように仕上げていこうと思います。
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『なんて素敵にジャパネスク 人妻編4』山内直美/氷室冴子
2006/11/06 (月) カテゴリー/COMIC
連載があのような形で終了してしまったときは本当に悲しかったものです。それでも絵に何か疲労のようなものを子ども心(笑)に感じて、しょうがないのかなと思いましたが。このように連載が再開されることも滅多にないことなので、素直に楽しんでおります。とりあえず疲労を溜め込んだりせずに、無事に連載を続けてほしいです…(祈)
高彬を嫉妬に狂わせた帥の宮と対峙した瑠璃姫。帥の宮に対する不信感を募らせる瑠璃姫だが、自分たちを取り巻く政治的な状況を知り、いっそう帥の宮に対する不信感を募らせる。
いよいよ面白くなってきた帥の宮編。もうあらすじについては語るべきこともなく。だって原作ってもう20年くらい前の作品ですよ(きっと)。これだけたっても飽きさせないストーリーと個性的なキャラクターたちはスバラシイ…。私は山内直美さんのコマ割りがとても好きです。コマの強弱と表情がピッタリあっていて、このジャパネスクの勢いを見事に再現していると個人的に思っています。吉野編は原作じゃ何にも感じませんでしたが(すみません)、マンガは泣けました。高彬も原作よりマンガの方が好きですし。とにかく原作よりファンと言っても過言でない。次が楽しみです。
そういえば原作の氷室冴子さんは今いったい何をしておられるのでしょうか。「銀の海金の大地」はいまどうなってしまったのでしょう。こちらも連載が途絶えて10年近く経ちました。終わるんなら「もう転生しません!」とどこかでおっしゃっていただきたいです…。壮大すぎて疲れてしまったのですか???何か情報をお持ちの方、教えてください……
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ブリおこし
2006/11/06 (月) カテゴリー/徒然雑記
”ブリおこし”がくるということは、つまりもう冬??
今年は昨年のような大雪にならないことを祈っております。
とりあえず、今日冬対策の長靴を買い替えました。
夜のお伴のラジオが雷でブチブチと切れています。
雑音が大きくなれば雷が近付いているのが分かる上に、遠くで鳴っていても反応してくれるので雷が苦手な私としては、ある意味センサーみたいなものなんですが、一方で雷呼ぶんじゃなかろうかと不安になります。で、ホントに近くなると切ってみたり……うわ、すごい雑音が。近そう。パソコンを落としましょう……
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『DEATH NOTE the Last name』
2006/11/06 (月) カテゴリー/映画
早々に観にいってみました。
恋人を犠牲にして”L”に近付くことに成功した月。そこに現れた第2のキラこと、海砂。2人はともに”L”を追いつめようとするが…というのは原作と同じ。
意外や意外、かなりドキドキして見てしまいました。
そして学びました、原作があるものは見ない方が素直に楽しめることを。デスノはずっと読んでいたのですが、”L”が死んでしまうところは私は見事に読み損ねたままに来ていました。なので素直にドキドキしながら見ていました。そして140分という時間に濃縮果汁を詰め込んだはずなのに、話をはしょるというよりは分かりやすくまとめたという感じで、どちらかと云えば前編の方が違和感があったぐらいかも。ラストは賛否両論かもしれませんが、最後の”L”の台詞とかうまくハマっていたと思います。いや、ラストは本当に悲しかったわ…。
そしてキャストがまたうまくハマっておりました。あまり意識していなかった女優・戸田恵梨香でしたが、一途な感じがとても可愛らしくキラを信望する暗い過去も匂わせていて、死神に愛される要素を持ち合わせていたと思います。もちろん藤原竜也は大変上手で、横山ケンイチも本当にピッタリ。
うん、見てよかった。
テーマ : DEATH NOTE the Last name - ジャンル : 映画
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